突然どうしたの?という記事ですみません(苦笑)
パンデミックの始まる頃から書き溜めておいたのですが、なかなか公開できないままほったらかしでした💦
法曹界で働いていると色々と相談がありますが、法曹界といえども広いので、分野外のことも多々あります。今回、何人かの知人の相談にのりながら、新しい知識が少し増えたかなと思い、将来私自身のもしものため?の議事録と、韓国で不倫沙汰になって少しでも情報が欲しい(訴える側・訴えられる側両)方のために記事にしてみました。
はじめに
韓国の法律は大部分が日本の法律の丸写しから始まります。(そもそも日本も欧米の丸写しからでしたがw)
この数十年をかけて徐々に改正がされて日本とも異なるようになりましたが、法にでてくる用語や手続きの流れ、訴訟の準備などは日本と重なることが多いので、概要は日本の流れをみておけば難しくはないのかなと思います。
関連する用語も最後に載せているので、韓国語でも検索して自分でも頭に入れておく方がいいでしょう(弁護士事務所もそこまで詳しく教えてくれない💦)
ちなみに韓国では以前「姦通罪」という刑法がありましたが、現在は廃止されています。
今回は、子どものいる家庭の場合です。また、離婚の意向はなく不倫相手に慰謝料を請求する民事「損害賠償」訴訟になります。
本人が直接裁判所に訴えることも可能ですが(面倒です)、今回は弁護士事務所を通しての訴訟です。
離婚の意向がある場合で、子どもがいる場合は日韓ともに「ハーグ条約」締約国なので、さらに注意が必要ですが、ここでは割愛します。
不倫が発覚したら
配偶者にばれないように証拠集めを始めます。ただ、無意味に証拠を集めて配偶者に突き出して白状させるなどということをすると、場合によっては逆に訴えられることがあるので注意しましょう。
(例)相手の同意のない録音・録画は逆訴訟される可能性があります。<民事あるいは刑事訴訟になる可能性>
とはいえ、配偶者との会話録音は基本的に違法ではありません。配偶者が不倫の事実を認めるという証拠にもなるので、もし事実証拠のためであるなら録音は必須です。
まず何をすればいいかわからない場合は、無料の弁護士相談を受けて、「どんな証拠が有利か」を確認しましょう。
自分で集めた証拠も、訴訟に利用するかどうかは弁護士の判断になるので、余計なものを集める必要がないからです。
なお、
無料の弁護士相談では「弁護士の紹介や斡旋はしていません」
無料の弁護士相談
住民センター
居住地の住民センターでは週に数回、決まった曜日に相談があります。予約制なので、住民センターに電話で確認してみましょう。
外国人の場合、外国人専門の弁護士無料相談があります。
다문화 가족지원 포털 다누리 →相談センタータブをクリック
日本語での案内も可能なので、まずはセンターに電話して予約してみましょう。
損害賠償などの弁護士紹介はないですが、もし DVなどの家庭問題がある場合は国選での弁護士委任ができるそうですので、センターで詳しくお話されるのがいいかと思います。
確認しておくべきこと
自分でできる範囲で確認しておきましょう。
✔ 不倫相手が未婚か既婚か:既婚の場合、不倫相手の配偶者から逆訴訟される可能性があるので注意
✔ 相手の氏名&住所や職場:住所は訴状送付などで必要です。
✔ SNSなどの配偶者とのやりとりや手紙などのスクリーンショット
✔ ドライブレコーダーの記録
探偵に依頼?
韓国には探偵がいません。韓国では探偵は違法です。
探偵のような証拠探しを依頼したい場合は「興信所(흥신소)」に依頼をします。
1時間の相談で10万ウォン前後の費用がかかり、実際の依頼は最短日数での依頼になります。状況や交渉次第で1日50~100万ウォンです。
見積もりは無料なのであちこち見積もりをとってみるのもいいかもしれません。
(例)最短3日:150~300万ウォン
不倫相手と手をつないでいたり、一緒に家にはいる場面、ホテルに一緒に出入りする場面の写真が必要な時は有効です。
が、高費用の興信所に依頼をする前に、まずは弁護士に相談しましょう。訴訟に使えない証拠資料を高い費用で買い取るのももったいない!SNSのやりとりだけでも十分な場合があります。
弁護士に依頼
弁護士は慰謝料請求や離婚調停などの実績が豊富な専門の事務所に依頼しましょう。検索すればいくらでもでてきます。特にメディアにでていたり、SNSなどで活動などがわかる事務所がいいようです。
韓国でも弁護士とカカオなどでやりとりが可能なので、意思疎通が難しい場合は電話などではなくSNSでのやりとりも有効でしょう。
自分で訴訟請求はできますが、確実に慰謝料を勝ち取るためには、弁護士に依頼することをお勧めします。慰謝料の額によってはマイナスにはなりません。
弁護士費用など
弁護士受任費用(着手金)
200~400万ウォンで、事務所によって異なります。
例)300万ウォン+VAT(税金)30万ウォン=330万ウォン
*現金領収書の発行ができるので、年末調整や確定申告などで必要な場合は必ず発行してもらいましょう。
成功報酬(勝訴)
訴訟の結果で得る額の10%前後
慰謝料請求額は一般的に1000万ウォン~3000万ウォンなので、その額の%を成功報酬として支払います。事務所によって異なります。
裁判所手数料など
訴状や命令書請求などで裁判所に支払う手数料は実費負担です。提出するごとに弁護士事務所に支払います。これは裁判所で定められており、請求額により手数料が異なる場合があります。数万ウォン~数十万ウォン程度です。
慰謝料請求額
通常1000万ウォン~3000万ウォンです。結婚期間、不倫期間や何度目かなどでその額が裁判所により最終的に決定されます。
現在は3000ウォン万が最高ラインなので、3000万で請求し、そこから減額されることが多いようです。
訴訟の流れと期間
弁護士との打ち合わせ
すべての証拠資料を弁護士に提出しましょう。
裁判所に訴状を提出
訴状が受理され、相手方に送達されれば、 相手方は1ヶ月以内に答弁書を提出します。
経過後、裁判所で弁論期日が決定されます。(裁判所が期日を指定しない場合、こちらから期日を指定することもできます。)
事件番号で経過確認
事件番号は弁護士に聞けばわかるので、必ず教えてもらいましょう!
法院で経過を検索できます。
デフォルトで大法院(最高裁)と設定されているので、自身の法院を選んでから検索してください。黄色では「ソウル家庭法院」にしています。
(番外編)訴訟をされた場合
自身での対応も可能ですが、弁護士を雇って「和解(示談)」に進めることが多いようです。
訴状提出後
相手方が答弁書も弁論の出席もないまま進めば、判決が下されます。
判決の期間は定められていないようなので明確ではありませんが、約3か月後くらいを目安に判決が下されるかと思います。
判決から確定
判決がでたあと、2週間は控訴期間です。減額に不満があれば控訴できます。また相手側からの控訴期間でもあります。特になにもなければ2週間で「確定」になります。
支払い命令
裁判所から相手側に支払い命令が送達され、2週間の異議申し立て期間があります。この期間を過ぎても支払いがない場合は次のステップに進みます。
債権押留および推尋命令
差し押さえの請求を裁判所に提出します。強制執行を裁判所に要請するものです。債権として預貯金、給与、保険金、クレジットカード、不動産保証金などの差し押さえが可能です。
ここから支払いが完了するのに6カ月以上はかかるようです。
証拠集めから慰謝料の獲得まで1年くらいはかかるので、気長にいきましょう。
スケジュールなどはどんどん弁護士に問い合わせしましょう。弁護士も案件が多いと、忘れているので(苦笑)、自分から確認しても大丈夫です!
注意事項
今回は離婚はしない前提ですが、離婚も前提とした場合、慰謝料の額は5000万ウォン前後まで最高額ラインが上がります。
ちなみに、韓国での離婚は最初から「離婚調停」のような手続きをとるので、日本のように紙切れ1枚で離婚は成立しません。
離婚になったあとの養育費
日本でも養育費を払わない・・という問題がありますが、韓国では法改正により、養育費を払わないことが過度になる場合、「実名公開」という処理がされます。
さらに、実名を公開しても支払いがない場合、出国停止命令や運転免許証停止などがされるので、こういった制度を把握しておくことも大切だと思います。
用語集
まとめ
法改正や、URLの更新などで情報が古いことがあるかもしれません。(なるべく更新しようかとは思いますが)
ここでは、不倫からの離婚についてのお話ですが、モラハラやDVでお悩みの在韓日本人の方には、まず다누리での相談が一番わかりやすいかなと思います。私は被害者が韓国語が苦手だったため、代わりに다누리で韓国語で質問したりしますが、とてもやさしく丁寧に教えてくれます。(日本語もあったと思うので、お悩みの方は利用をお勧めします)